大学の留学生戦略

武蔵野大学


卒業生の日本語教員通じ留学生獲得
「手作りブランド」の良さを追求
 東京都西東京市にある武蔵野大学は、「仏教精神に基づく人格完成」を建学の精神に、 1924年開設した武蔵野女子学院を母体とする私立大学だ。2003年4月には武蔵野大学へと名称を変更し、 翌2004年には薬学部を開設。同時に全学部を男女共学化し、理系学部を併せ持つ総合大学としてスタートした。 2009年度には6番目の学部として環境学部を新設する。
 同大学の学生数は2008年5月1日現在で5481名。うち留学生数は204名(学部88名、大学院116名)となっている。 留学生教育に関しては、中規模校の利点を生かして一人ひとりを懇切に育てる教育方針を取っている。
 武蔵野大学大学院の佐々木瑞枝教授(日本語教育コース担当)は、 「日本語教育分野の大学院卒業生が国内や海外の教育機関で教えるようになり、 実践的な彼らの授業が留学生たちを日本にひきつけるようだ」と話す。優秀な日本語教員を養成し、 その教師を通して外国人留学生の獲得につなげる戦略だ。「こんなに良い先生の出た大学なら行ってみたい」といって留学生が来る、 好循環が生まれつつあるという。
 「留学生1000人以上の規模の大学とは異なり、少数精鋭体制の良さを活かして優秀な人材を育てることはやりがいがある。 『手作りブランド』としての本学の良さをぜひ実感してほしい」(佐々木教授)。 日本語教育コースの卒業生は青島大学やダマスカス大学ほか、各国の高等教育機関で日本語教員の職についており、 今後は韓国の大学にも送り出すことを計画している。
2008年10月1日には、中国の青島大学で日本語教育主任を務める卒業生が、 日本への研修旅行の中で青島大学の学生10人を引き連れて母校を訪れている。

学長を囲んで(卒業生の引率で青島大学の学生が来日)

 このように、海外現地等での日本語教育を通して日本ファンを作り、日本の「顧客」ならぬ「個客」 を作っていこうとするユニークな方針だ。「自ら望んで留学生が来てくれる循環をいかにして作っていくかが大切。 そのためにはふさわしい戦略では」と佐々木教授は話す。国内の大学をめぐってはODAが縮小傾向にあり、 授業料減免率の行方も不透明な中、同大学では常に先手を打って次なるビジョンを描いていこうとしている。
 武蔵野大学の寺崎修学長は、「本学を決して単なる学生の通過点にはしたくない。国に帰って指導的な役割を果たせる人材を育て、 その国から留学生を再び本学に送り出して欲しいと話す。2012年度からは東京都江東区有明に.新キャンパスを開設し、 文系の学部と大学院、通信.教育部などを移転させる。同時に大学院レベルの留学生を多く受け入れ、 今後10年間の大学の発展をけん引する中心基地とする。用地は4000坪(約1万3千㎡)にも上る広大な土地で、用地取得に100億円、 校舎建設に100億円を投入する一大計画となる。
 同時に、国内外の専門機関や研究者との共同研究、および人的交流を行う「政治経済研究所」も有明新キャンパスに移し、 大学院政治経済研究科を新設して、ハイレベルな研究環境を留学生に開放する。日本人と区別なく試験を行い、 世界的に優秀な人材が集まる研究拠点としていくことを検討している。
 いっぽう、同大学では就職支援に非常に力を注いでいる。職業に必要な知識・能力の習癖や職業観を涵養「キャリア開発科目群」、 社会人基礎力を身につける「専任教員によるキャリア教育の実践」 といったプログラムを展開し、授業科目として単位認定している。 インターンシップも授業科目の一環として行っており、集中授業や事前研修を経て国内企業で体験するコースのほか、 英語研修を行った上でシドニーや北京などのホテル・旅行・航空会社などに派遣する海外インターンシップなど、 充実したプログラムを開発している。
 また、日本企業で働く上で基礎となる日本語力を身につけたいという留学生のために、 政治経済学部にビジネス日本語科目を設けることを検討している。ビジネスの現場で日本語を用いて議論し、 日本人と対等に渡り合えるような人材の育成を行うことを視野に入れている。

ハイテク設備を備えた7号館

2008年11月1日 向学新聞記事

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