日本語教師という職業、最近脚光を浴び始めているわりには、まだまだよく理解されていない。自国語を
教えることはそう簡単なことではないし、教授法を習得して資格を取らなくてはいけないことも、きちんと知られてはいないようだ。 佐々木さんは今、NHK文化センターで『外国人への日本語の教え方』 の講座を担当している。教室にはちらほら男性の姿もあるが、大半は女性。実際、日 本語教師の90%は女性だそうである。 彼女の仕事はここだけにとどまらない。現場の教師として、留学生たちに日本語を教えたり、日本に長年滞在している外国人を対象に、日本事情の講座を担当 したり。「クラスの下準備が大変なんです。わたしよりも日本の伝統芸能なんかに詳しいひとがいたりして、ぎゃふんといわされないように、自分自身のために 勉強しているみたいな部分もありますしね」 多忙この上ない毎日だが、好きなことをやっているんだという思いゆえか、忙しさが苦になったりすることはない。それどころか楽しんでいる、といったほう が正確かもしれない。 「ひとから変わっているといわれたって、自分がこうしたいんだからこれでいいんだという気持ちは、子どもの項から持っていました。主人も同じ考えの持ち主 で、それにもずいぶん影響を受けましたけど」 家のことは、彼女の言葉を借りれば、〝まったくの共同生活〟、子どもたちも進んで食事の準備を手伝うし、ご主人も自分の物だけは、洗濯やアイロンがけも いとわない。 「子どもたちのために、そんなに多くのことをしてはやれないけど、こっちが忙しくしているのを見てわかってくれているみたい」 子育てのために--それもまた楽しいことだったとは、本人の弁だが--10年間ほど離れていた時期を除けば、常に仕事を持ち続け、それを当然のことと 思ってきた。「案外、内心では夫も少し不満に思っているところもあるかもしれませんね」 そんな不安が時によぎることもあるけれど--。 毎年、夏にはイギリスに渡り、サマースクールで日本語を教えている。彼地の新聞からインタビューを受けて、いまだに日本に対する古くさいステレオタイプ が残っていることに腹立たしい思いをしたことがあった。そんなイギリス人たちに、彼女は日本の今を生きる女性のことを伝える、格好の存在だったのではない だろうか。 |