英国サザンプトンのインターナショナルコース
1986年8月29日
THE STUDENT TIMES ST海外レポート




 夏休みのホームステイ・プログラム。-アメリカへ行きたいなあ、とすぐ思いがちな私たち。どうも、日本の学生はアメリカ志向が強いらしい.アメリカ人は気取らないし、何でも受け入れてくれる文化的雰薗気がある.
ところが、何しろ広いアメリカのこと、車なしではどこへも行けず、ホスト・ファミリーとは親しくなっても、それ以上の人たちと友人になるのは、なかなかむずかしい。語学研修にしても、1カ所に日本人の学生ばかりが集まり、数名のアメリカ人の先生に習うことになるが、どうしても日本語を話す機会が多くなってしまう。それとは対照的なのが、今回ご紹介する、イギリスのサマーコース。ヨーロッパ各国の学生といっしょに、英語のレッスンばかりでなく、スポーツやハイキングを適して、ステキな友情が生まれるかもしれない。

■小都市のサマーコースを狙え
 イギリスのサマーコースの特徴は、まずクラスがinternationalであること
(フランス、ドイツ、スペイン、イタリアなどヨーロッパ諸国の学生達でクラス編成されるから、日本人はその中に数名しか入らない)、授業が終ったあとバス旅行やスポーツなどの色々な行事が組まれていること、友人の所に遊びに行くにもバスで簡単に行けること、などが挙げられるだろう。
 イギリスと言えば、OxfordやCambridgeが頭に浮かぶのは誰しも同じこと。OXfordで英語研修しましたなんていうと恰好が良いから、行くならOXfordにしたいと思う人には、こんな忠告を差し上げたい。
 OXfordもCambridgeも美しい大学都市だが、こと夏に関しては、日本の旅行代理店や教育機関が何千人という日本人の中、高、大学生を送り込んで来るため、せっかくのインターナショナル・クラスも、半分以上は日本人ということになりかねない。また、ホームステイ出来る家の数は限られているのに、夏はどっと学生たちが押し寄せるので、良い家庭に当たるのは珍しく、へたをすると下宿屋に行かされる破目になるのである。
 それならどこが良いかと言うことになるが、サマーコースは Brighton、Bristol、Winchesterなどの各小都市に、必ずと言っていいほどある。

 私はこ、こ数年、Cambtidgeや:Southamptontで日本語のサマーゴーズを担当している。日大国際関係学部の学生たちから「イギリスで勉強したいが…」という相談を持ちかけられ、今年は10数名の日大の学生と7月上旬からSouthamptonに滞在している。学生たちはサザンプトン大学で行われているEnglish Summer Courseを受講しているのだが、これが非常に優れたプログラムなので、読者の皆さんにもご紹介したい。

■格調高いサザンプトン大学
 Southamptonはクイーン・エリザベス号の寄港地としても知られる港町。Londonから南に急行で1時間、人口30万の小都市である。
 サザンプトン大学は〕新しい大学としては、かなり格が高い。文学部、工学部、芸術学部などが広いキャンパスの中に点々とある。
 ここで行われるサマーコースは、イギリスの教育機関がオーガナイズしているもので、第1日目はGRADING TESTから始まる。
 300人ものヨーロッパの学生にまじると、日本人の学生は、なんとなく影が薄い。陽気なのはイタリア人の学生たちで、大きな笑い声をあげて、教室を明るくしている。
 さていよいよテスト。問題用紙が配られる。Section Iは文法のテスト。日本人は文法に強いから、この辺は軽くこなせるだろう。全部で40問ある。いくつか試してみよう。

■クラス分けテストに挑戦
問題
-Decide which item-(A), (B),
(C) or (D)-is necessary to complete the sentence correctly. Write the correct letter in the box provided.
36. It's a long time (A since I last saw) (B since I last seen) (C that I haven't seen) (D that I didn't see) her.

37. When the old lady fell downstairs,
(A she nearly was killed) (B she was nearly killed) (C nearly she was killed) (D she was killed nearly).

38. They turned on the radio just in time (A to hear) (B to listen) (C for listen) (D for hearing) the news.

39. Last week he promised he (A would have come) (B will come) (C is coming) (D would come) today, but he hasn't.

40. If my friend had been there, he (A would help) (B would have help) (C would have helped) (D did help) me,

 一見簡単そう軽見えるけれど、何だか紛らわしい問題でしょう? これは40問のうち、最後の5つ、つまり一番むずかしい部分。
 Section IIは英作文の問題。要領良く、スペリングのミスや文法のミスのないように書くこと。
PICTURE COMPOSITION
Look carefully at the 5 pictures and, on the next page, write the story about what happened when Peter and Bob climbed the mountain.
(100-120 words)
 Section IIIは会話力テスト。間違いなど気にせずに、とにかく話すこと。日本人の失敗で多いのは、先生の質問が聞きとれず黙りこんでしまうこと。これでは英意力の判断のしょうがないので、得点はゼロになってしまう。「先生の質問の意味がよく分与なかったので、自分がイギリスでしたいことを勝手にしゃべっちゃった」なんていう学生が上のクラスに入っているから、少し心臓を強くして話すこと。
 翌日になると、クラス分けが壁に張り出される。日本での学年や成績は一切関係ない。

■最初はきついかもしれない
 1クラスは15名。私の学生は4人も上のクラスに入っていた。これは良い出来と内心喜んでいたら、「先生助けて、全くわからない。これじゃ僕たちout siderだ」とtea brehkにH君がかけ込んで来たや先生の言うことはどうにか分っても、ディスカッションとなると、ドイヅやフランスの学生にかなわないのだそうだ。新聞の記事を読み、その内容について意見を発表するとなると、相当高い英語力が必要とされる。「無理して上のクラスにいてもつまらないから、先生に相談して下げてもらったら?」ということになる。
 English lessonsは月、火、水、金の9:00~1:15と、かなりハードである。学校でも家庭でも、英語が唯一のコミュニケーションの手段だから、耳の方が自然に慣れてくる。「先生、だんだん皆の言う手とが言葉として聞こえるようになりました。はじめは雑音のようでしたけれど」と、ある女子学生。よかった。
 皆さんに、ここでの1週間のプログラムを紹介しよう。
 第1日目には、テストのあと英語の先生が大学のまわりをつれ歩いてくれる。翌日から迷子にならないためだ。バスのパスを買うのも、この日。3週間で約14ポンド(3,500円くらい)。これでSouthampton市内を走るダブルデッカーのバスに乗り放題だから安い。
 火曜の午後は半日のEXCURSION。
 水曜の午後はスポーツ。
 木曜は朝からEXCURSION。
 この頃になると、クラスにドイツ人やイタリア人の友達が出来て、バスの中でおしゃべりの輪が広がる。ハンサムなフランス人の男の子の隣りにうれしそうに座っているK子さん。国際的な友情の芽生える時だ。
 このSouthamptonのコースで感心するめは旅行、スポーツ、その他すべての費用が最初から含まれていることで、たいていの学校はこうはいかない。たとえばBrightonのEnglish Center、は、やはり優れたコ「スで有名だがこ学生たちは行事に参加するたびに費用を払わなければならず、小遣いが足りないと悲鳴をあげていた。

■ホスト・ファミリー弁当!?
 さて、気になるのはhost family。Southamptonには中流以上の家庭が多いので、生徒たちはまあまあの所に落着く。中にはお弁当を忘れたからと言って、学校まで届けてくれるfamilyもあり.、過保護ではないかと思えるほど。学生たちはお弁当を作ってもらい、学校に来る。イギリス人は時間にきちんとしているので「家で夕食をするなら6時までに帰りなさい。遅くなる時は電話しなさい。門限ま9時」などと言い渡される。
 9時というと、日本の親は心配する。しかし、こちらでは夜9時半頃まで明るいし、治安も良いので安心。アメリカのようにプールつきの家などないが、涼しいので泳ぐ気も起らない。不満と言えば食事だろう。量は問題ないのだが、English foodは決しておいしいとは言えない。味覚の違いと思って、あきらめることだ。
 3週間のコースはあっという間に過ぎ、そしてhost familyと涙の別れとなる。日本へのおみやげはEnglish Courseの修了証と成績表。そして英会話力の向上(!)である。
 成績表には、COURSE PARTICIPATION などと日本の通信簿にはない項目もあるし、何よりも興味深いのはIMPROVEMENT。つまり、どのくらい進歩したかにポイントが置かれていること。グレード別にクラス分けされているから、どのくらい英語力があるかは、それほど問題ではないのだ。
 ここでの英語学習が、すぐに日本での学校の成績に反映するとは限らないが、英語で生活したという経験が、これからの英語に対する自信につながることは間違いないと思う。

■日本=ハイテク、チャイナ服
 ヨーロッパの若者たちは、日本をどんな風にとらえでいるのだろうか。簡単な英語によるアンケートを試みた。
(2クラスこ30名回答)
国籍:ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・カナダ・イギリス
年令:14歳~22歳
質問1 Is Japan bigger than your country?
 これは面白いことに、ほとんどの回答が正解。むしろ日本人の学生の方が「先生、日本はドイツより大きいの?」なんて聞いてくる。日本は東西ドイツを合わせたより広いというのに。私たちの頭の中には、“日本は狭い〝というイメージがこびりついているらしい。
質問2 What is yourimpression of Japan?
 これは.絵を描いた生徒と文章で答えた生徒がいる。絵は予想した通りコンピューター、バイク、車、新幹線などが多い。しかし日本人となると、未だに着物を着ていたり、中曽根首相の名前を知っているスペインの少年が、三角の帽子にチャイナ服の姿を描いたり、支離滅裂。それでも忘れずに首から下げたカメラを描くところを見ると、写真気違いの日本人のイメージが強いらしい。その他に富士山が大爆発している絵や、広島の原爆、さすがにフジヤマ、サクラを描く学生はいなかった。
質問3 Have you ever eaten Japanese food?
 この、答は全員がNo。でも中華料理と似ているんでしょう、と書いた人が多かった。
質問4 Do you know theJapanese Prime Minister?
 驚いたことに、8人もの学生が中曽根と答えている。ここまで名前が売れれば大したものです。参考までに、イギリス人で中曽根の名前を知っている人は、ほとんどいない。大学生でさえ!
質問5 Do you know Japanese history?
「『ショーグン』を見たから知っている」と答えた学生が多い。
質問6 In your houses what do you use that is made in Japapn?
 時計、テレビ、カメラ、車などをあげているが、彼らの気づかなし?部分でも、日本製品は深く侵透していると思う。

■ギリシャ彫刻のような先生
 全体としては、まあ満足のいく回答だった。参考までに生徒たちのあこがれの先生、Julianの答を載せておこう。
London大学卒、24歳、身長190cm、Secondary schoolの英語の先生。ギリシャ彫刻のような彫りの深いマスク、もの静かで謙虚な態度、生徒に人気があるのも分る様な気がする。
Q : What is your impression of Japan?
A: I think that Japan is a very beautiful country. It has many mountains and forests. However, I get the impression that the major cities are very big conurbations and are busy, crowded and polluted. I feel that Japan has a very strong cultural heritage and would be interested in finding out more about it. The Japanese people seem friendly, polite and are always eager to learn.
Q : Do you know the Japanese Prime Minister?
A: No, because there is not a lot of coverage of Japanese politics on English television.
Q: Make a list of Japanese cities you know.
A: The Japanese cities I know are Tokyo, Hiroshima and Nagasaki.

 このアンケートに学生たちは実にうれしそうに答えてくれた。
International Courseも残りわずか、今日の午後は皆でDiscoへ行くのだとか。若いっていいな-!
1987年、サザンプトン大学で行われるサマーコースに興味のある人は“The Student Times"まではがきを! 資料をお送りします。