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はじめに
ジェンダー(性差)に関連する日本語の表現をジェンダー表現と呼ぶとすれば、日本語のジェンダー表現は社会構造と密接に関係しており、社会的・文化的背
景を含蓄している。日本語とジェンダー-学際的探究を目指して 筆者が中心となって日本語の中のジェンダー表現に関する研究会活動を始めたのは1997年だったが、2000年の秋には、この研究会グループが中心とな り、「日本語ジェンダー学会」が立ち上がった。第一回の大会・総会は2001年の3月、横浜国立大学の教育文化ホールで開催された。学会の役員の顔ぶれを みると、日本語教育学や言語学、国文学だけでなく、経営学、文化人類学、哲学、建築学というように、さまざまな領域から「日本語とジェンダー」の問題に取 り組もうという意気込みが感じられる。 学会設立から既に6年が経過し、学会の論文集である「日本語とジェンダー』では新しい視点からの論文が少しずつではあるが、この研究領域の確かな礎を築 きつつある。 本書は日本語ジェンダー学会の10人の執筆者による、「日本語とジェンダー」を主旋律とした室内楽といった趣で企画されている。 一つ一つの音楽の音色は異なっても、一冊の本として通読したとき、そこに確かな日本社会の通奏低音が流れていると思うからだ。 今後の「日本語とジェンダー」研究に本書が一石を投じることができれば幸いである。 本書の出版を勧めてくださったひつじ書房の松本功氏、および編集を担当くださった宮島紘子氏に心から感謝申し上げる。 2006年5月 著者を代表して佐々木瑞枝
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定価:本体2400円 ISBN4-89476-274-9 発行日:2006/6/10 |
目次 |
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はじめに |
1 |
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日本語の男性を表す語句と表現-資料からみる日本語の変遷- |
佐々木瑞枝 |
1 |
ジェンダーとポライトネス-女性は男性よりポライトなのか?- |
宇佐美まゆみ |
21 |
話しことばの終助詞の男女差の実際と意識-日本語教育での活用へ向けて- |
小川早百合 |
39 |
談話ストラテジーとしてのジェンダー標示形式 |
因京子 |
53 |
テレビドラマと実社会における女性文末詞使用のずれにみるジェンダーフィルタ |
水本光美 |
73 |
日本語教材とジェンダー |
渡部孝子 |
95 |
『源氏物語』とジェンダー-「宿世」を言わぬ女君- |
佐藤勢紀子 |
109 |
言語イデオロギーとしての「女ことば」-明治期「女学生ことば」の成立- |
中村桃子 |
121 |
日本におけるジェンダー的価値観-ヨーロッパ人の視点から- |
ユディット・ヒダシ |
139 |
日本語のジェンダー表現における「私」の揺らぎ |
日置弘一郎 |
151 |
資料 グラフに見るジェンダー |
佐々木瑞枝 |
167 |
参考文献資料 監修 佐々木瑞枝 |
177 |
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執筆者紹介 |
218 |